ごくたまに、ではあるが、カウンセリングの予約をしていた人が、その約束をすっかり忘れていて来ない、ということがある。忘れる、ということにはいろいろな意味があり、なぜ忘れたか必ずひとつの理由に絞れるわけではないが、こういう場合は、カウンセリングがそれほど重要・必要ではなくなってきている可能性がある。
カウンセリングを始めた頃は、困っていること、気になっていることがいろいろある。日常生活から少し離れて、自分のことや自分を取り巻くさまざまなこと、これまで起こったことや今後の生き方についてなど、話して考えることが必要だからこそ、予約を忘れることはまずない。しかしある程度の方向性が見えてくると、カウンセリングで話すことの必要性はだんだんと減ってくる。同時に以前よりもやりたいことが増えたり、楽しみがたくさんできたりして、いろいろと忙しくなってくる。現実の生活に多くのエネルギーを注ぐようになり、そうなるとカウンセリングをあまり意識しなくなる。そして予約を忘れる、ということが起こる。
子どもの場合だと、予約をしていても「行きたくない」「友だちと遊びたい」と言ったりする。約束したんだからと、親のほうは何とか連れて行こうとするのだが、子どもは行きたがらない。通い始めの頃は毎回のカウンセリング(子どもだと多くの場合プレイセラピー)を楽しみにしていて、なかなか帰りたがらないほどだったのに、と不思議になる。しかし子どもの場合も、相談室に通って元気を取り戻してくると、現実の生活の方が大事になってくる。積極的に行動しはじめ、友だちと遊ぶ方が楽しくなる。そうすればもうプレイセラピーは必要ない。
行く必要がないからこそ忘れる、行かない、というのは当然のことだろう。自分ではあまり意識していなかったとしても、終わるべきタイミングをどこかで分かっているのだ。こんなふうにちょうどいいタイミングで予約を忘れることがあると、こころの動きというのは不思議にうまくできているものなのだなと思う。
