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言葉にしない

 昔から運動は不得手で、とにかく体育の授業が苦痛だった。走っても泳いでもどうにも遅い。体操などはからだをどう動かしてよいか分からず、変に力が入ってしまう。何度やらされても逆上がりが自力でできたことなど一度もなく、体育の授業ではいつも情けないような恥ずかしいような思いをしていた。

 今でも運動に対しては強いコンプレックスがあり、スポーツ観戦も全くと言っていいほどしない。ただダンスを見るのはどういうわけか結構好きで、機会があれば出かけていく。先日もある外国のダンスカンパニーの来日公演があって見に行ってきた。

 ダンスが好きだといってもダンスに詳しいわけではない。一緒に見に行った知人のひとりはダンスに詳しく、見終わってからあれこれと感想を言ったり批評を語ったりしていたが、こちらはダンスを語る視点も言葉もない。いつも見ている間は、わー、へー、ふーん、すごい、だけで終わってしまう。しかしそれでいいと思っている。すべてのことを言葉にする必要もないだろう。いつもどんなことにも明確な意見や感想を持ち、自分の考えを言語化しないといけないというのも窮屈だ。 

 言葉にならない未分化な思いを無理やり言葉に変換しなくてもいい。例えば「えっ」としか言えない話も、叫ぶしかないような思いも、言葉をのむしかないような出来事もある。それをそのままそっとおいておくことも、こころを大事にすることなのではないかと思う。

 

 

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