谷川俊太郎さんが亡くなられて1年、だそうだ。それもあってか、最近谷川俊太郎さんに関する本がいくつか刊行されている。先日たまたま岩波書店から出ている「本当のことを言おうか1 谷川俊太郎精選対話」という本の広告を見た。全3巻のうちの第1巻が10月に出版されたが、“精選対話”というタイトル通り、おそらく数多く行ってきたであろう対談の中から選び抜いたものを収めた本で、1巻の冒頭には父である哲学者・谷川徹三との対談を掲載している。これはぜひ読みたいと思い、すぐに購入した。
谷川俊太郎29歳の時の対談だが、自分がどんなふうに育てられてきたのかなども含めて、親子関係や家庭内のことをおだやかに父と語っていることに驚いた。両親が自分を置いて外出してしまうことも珍しくなかったようだし、大学に行きたくないと言っているのに父は行けというなど、親に対して複雑な思いを抱いてもおかしくないような出来事も多々あったようだが、感情的な発言が一切ない。第三者も同席しての対談だから、というのでもないのだろう。谷川俊太郎は「ぼくの育った家庭は、自由な個人の集まりとしての家庭のよさというものがあったとおもうけれども」と語っているが、一方は哲学者で一方は詩人という谷川親子にとっては、こういう冷静で客観的な態度を維持することが当たり前だったのではないかという気がした。
谷川俊太郎に「母の恋文」(新潮社)という本がある。タイトルは“母の”となっているが両親が若い頃に送りあったラブレターを編纂した書簡集で、これも出版された時に興味深く読んだ。「恋文」の内容そのものというより、両親の「恋文」を客観的に見る谷川俊太郎の視点が興味深かった。親に対して冷静な視点があるからこそ、「恋文」のような感情があらわに示されているようなものも扱うことができたのではないか。
この対話集の第2巻では河合隼雄先生との対談が、第3巻では佐野洋子さんとの対談が掲載されるようだ。今から楽しみにしている。
