箱庭師Hさん逝く

愛知県にHさんという箱庭療法に魅せられた方が在った。私よりもひとまわり以上年上で、私が名古屋で箱庭療法研究会を開いたときにお会いしてしばらく研究会にお出でになっていた。その後お互いに活動分野が違うのでお会いする機会はなかなかなかったが、時に手紙のやり取りがあり、また、若く臨床心理士になるべき人を紹介してくださったこともあった。

会社役員をしておられ、社員への心配りをしながら熱心に箱庭療法を実践され、退職後は箱庭療法に専念し、関係のグループで後進の指導をされ、86歳まで研究会に参加されていたという。

Hさんが活動しておられたグループは東海箱庭療法研究会とはほとんど接点がなかったのでどのように活動していらっしゃったかはわからなかったが、実際は自宅の8畳間で訪ねてくる人といつも箱庭を介して面接され、こころの生活の相談を誠実にされていたのであった。多分料金を取ることもなく、人々の相談に乗っておられたと思う。私がお会いしていたころそうだったから。家でも外でも諍いを好まず、常に自分を抑えて誠実に付き合う方であった。自分の生き方を曲げないHさんは自誓自戒の宗教者のように箱庭療法の道を歩まれたのであろうと思う。

Hさんは決して事例を発表することは無さらなかったと思う。箱庭療法学会にも関心はなかった。箱庭を介して人の在り方や生き方を話し合う方だったと思う。私たちと同じカウンセリングの世界に在って自分の生き方、そして自分の分を守って人生を全うされたようである。

私もHさんに見習わねばならないような状況に立ち至っているのではないかと思いながらこれを書いている。