· 

その時その場で

 先週末、矯正協会が行う箱庭に関する研修に講師として呼んでいただき、東京に行ってきた。矯正協会の研修は、毎回、熱心に誠実に仕事をしている方が多く参加してくれ、とても雰囲気が良い。今回もいろいろな人が質問や感想・意見を積極的に出してくれて、うれしかった。参加してくれた人が多く発言してくれると議論が盛り上がるし、場がいきいきとしてくる。

 講師として呼ばれた以上、講義のための資料も作るし、話の内容も準備していくが、決められたことを話すだけではあまりおもしろくない。いきいきとした雰囲気が生まれてこないように思う。その時その場にいる人によって話の内容は異なるものだ。自分の話がどう受け止められるのか、どんなところに興味を持たれるのか、何が必要とされるのか、その時その場にいる人によって変わる。せっかくならその時その場の状況を感じ取り、その上で自分のこころに沸いてきたものを織り交ぜて話がしたい。

 研修やセミナーなどで講師を引き受けた時、一番おもしろく感じるのは、こちらが一通り話し終えた後の質疑応答の時間だ。いわば台本のないフリートークのようなもので、質問もそれに対する回答も全てその場の思いつきで勝負する。何が出てくるか分からない。そこがおもしろいところだ。

 もちろん「思いつき」と言っても、いい加減なものではない。こちらが自分なりに借り物でない話をすると、それに呼応するかのように、その人が本当に知りたいことや困っていることについての質問が出てくる。多くは教科書的な回答では済ませられないような問いだ。それに対して自分が持っている知識とこれまでの経験、そしてその場で自分のなかに湧いてきたもの、そういった自分の中にあるものを活かして話をする。あれこれ話をしていると、自分でも意外な考えが生まれてきたり、思ってもいない意外な方向性が見えてきたりすることもある。こういうやり取りがおもしろい。直接会って話をしているからこそ生まれるものがあり、その時その場でしか出てこないものがある。こういうところは個別のカウンセリングにも共通するものだ。

 普段はカウンセリングの仕事が中心で、一対一での話がほとんどだ。複数の人と向き合う研修やセミナーにはやや緊張も感じてしまうのだが、今回の東京での出会い、そこでのやり取りなどを思い返すと、こういう仕事もがんばりがいがあると思う。

 

〈次へ  前へ〉