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小さな思い出

 笠原嘉先生が亡くなられたと聞いた。そのすぐ後に倉光修先生が亡くなられたと聞いた。

 おふたりとも檀渓心理相談室での事例研究会に講師としてお越しいただいたことがある。10年、あるいはそれ以上前のことだ。

 笠原先生は1年の継続セミナーの講師としてお越しいただいたが、その時のことは前室長の西村洲衞男先生が「笠原嘉先生に学ぶ」というエッセイに書かれている。われわれとは異なる医師という立場からのコメントで、その視点の違いも含めていろいろと勉強になった。毎回、セミナーの後のお茶の時間にも付き合っていただき、いろいろと気楽にお話していただけたのもうれしかった。当時、笠原先生は80代だったが、小説など、本をたくさん読んでおられたようで、川上弘美について話をされたこともあったし、音楽はマーラーを好んで聞いているなどを話されたことを覚えている。前室長の西村先生とは京都時代からの長い付き合いで、京都で同じ研究会に参加されていたそうだ。50年近く前の話なのに、その研究会で西村先生が発表された夢分析の事例のことをよく覚えておられ「あのケースはおもしろかった」などとお話をされていたことも記憶に残っている。私はその頃、笠原先生の2万円近くする本を思い切って買ったばかりで、せっかくだからとその本にサインをしていただいたが、当時のセミナーの良い記念だ。

 倉光先生は、数年前に西村先生が亡くなられた時、訃報をお知りになってすぐに相談室にメールをくださった。西村先生に対する思いを語られ、ご家族や私たち相談室のスタッフにも温かい言葉もかけていただき、励まされたような気持ちになったのをよく覚えている。10年以上前にセミナーにお越しいただいた時には、ご自分が関わったいろいろな仕事について話をしていただいたが、倉光先生の考えや人柄が感じ取れて印象に残っている。個人的なことだが、実は私が臨床心理士の資格試験を受けた時、二次試験の面接で試験官のおひとりが倉光先生で、だからというのでもないが、なんとなく昔から倉光先生に対しては他の先生に対してとはちょっと違う勝手な思い入れがあった。今年の心理臨床学会のシンポジウムで話をされる予定もあったと聞くが、突然の訃報で驚いている。

 直接話を聞くことができた先生方が亡くなられたと聞いて、淋しさとともに、時間はこうやって過ぎていくんだなと感じている。

 

 

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