弔辞

長谷川泰子

 

 去る7月16日、法音寺(名古屋市昭和区)にて、檀渓心理相談室前室長 西村洲衛男先生を偲ぶ会が行われました。追善法要では生前に先生がご指名になった3名が弔辞を読み上げ、私は一番最後に弔辞を読ませていただきました。その文をここに掲載させていただきます。

 

 

 

 

弔辞

 

 

 今日ここに集まった私たちは皆、かつて西村先生と出会い、話し合い、同じ時間を過ごしてきました。私たちはそれぞれに西村先生のこころに出会い、たましいに触れる機会を持ちました。

 

 本当に様々な面をお持ちの先生でした。厳しい父親的なところもあれば、受容的であたたかい母性的なところも感じました。好奇心旺盛で甘え上手、子どものようなあそびごころもお持ちでしたし、どんなに年が離れていても、友だちのように話ができる気さくさも持っていらっしゃる先生でした。

  

 威厳がありながら謙虚、頑固だけれど柔軟、活発だけど静か、常識にとらわれない自由さがありながらも、どこまでも厳しく自分を律しておられました。そして、矛盾を矛盾のまま抱えながら、確固として揺るがないものをお持ちでした。

 それはきっと、西村先生が真摯な態度で無意識に向き合い、こころの真実から目をそらさず、自分自身を深める努力を怠らなかったからこそ、得られたものなのだと思います。

 ためらわず怖れることなく、ご自分の道を歩まれた方でした。

 西村先生と出会い、そのこころ、そのたましいに触れることができたことは、私たちの人生において、大きな幸せです。

 

 

 西村先生の実体はすでに私たちの前にはありません。しかし今はもう、そのことは大きな問題ではないように思います。

 これまでもそうだったように、今この瞬間も、そしてこれからもずっと、

 私たち一人ひとりのこころの奥深くで、そして西村先生を知る私たちの間で、

 西村先生はいつでも何度でも繰り返しよみがえり続けます。

 そして私たちがそのことに気がつかなくても、無意識であろうとも、

 見失ってはならない大切な何かを、これからもずっと語りかけてくださることでしょう。

 

 その声に耳を傾け、話し合う強さと謙虚さをいつまでも忘れずにいたい、そして西村先生がそうであったように、最後まで、節度と勇気を持って自分自身の人生を歩み続けたいと思います。

 

  

 

 檀渓心理相談室  長谷川泰子

 

 

 

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※この写真は法音寺の許可をいただいて掲載しています。転載を固く禁じます。