スープの味

長谷川泰子

 

 昼食にはたいてい自分で弁当を用意する。長年の習慣だ。作るメニューはいつも同じ、具沢山のスープ。毎日のことなので弁当の準備のためにやることはすでに自動化している。前の日の夜に具材を用意しておいて、朝食の間にぐつぐつと煮込み、後は大容量のスープジャーに入れて出来上がり。簡単でいい。スープとは別におにぎりかパンなどの主食、これだけで十分お腹いっぱいになる。

 たかがスープで特別おいしいというわけでもないけれど、毎日それなりに楽しんで昼ごはんを食べている。例えば今日のスープにはサツマイモ、玉ねぎ、にんじん、鶏肉、そしてあまっていたシメジを大量に入れた。きのこの類は意外に自己主張が強いようで、他の具材よりもシメジの風味が前面に出ていたように思った。何を具材にするか、何と何を組み合わせるかによって、味・風味が変わり、毎日でも飽きずに食べている。

 ふっとこういうのはカウンセリングでも同じところがあるのかと考えた。一定の時間、一定の場所で会って話し合う。面接の大枠・構造はあるていど決まったもの・一定のものがあるけれど、誰と会うのか、いつ会うのかによってかなり中味が変わってくる。Aというカウンセラーに会うのと、Bというカウンセラーに会うのでは、同じ人が同じ問題を抱えて相談に行ったとしても、話の方向性が全く異なってくる。更に言えば、同じCというカウンセラーに会うとしても、20歳の時に行くのと30歳の時に行くのでは、やはり話の方向性が変わる。10年という長い時間の差ではないにしても、今行くのと3ヵ月後に行くのとでは、やはり違いが出てくるものだ。

 どれがいいというものでもない。組み合わせによって味わいはすべて異なる。だからこそ今ここでこの人と会って話をする、そのことを大事にしたいと思う。

 

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