静けさ・にぎやかさ

長谷川泰子

 

 少し前、相談室に来た人に「ここは静かでいいですね」と言われた。都会のにぎやかなところでカウンセリングの仕事をしている人で、だからこそ静けさに気がついたらしい。相談室の前の道はあまり車も通らず、その道を挟んで川があり、川の向こうは住宅街、という環境で、確かに静かな場所だ。車の音も人の声もあまり聞こえない。マンションの一室にある相談室だが、他の住民の物音が気になるようなことも、そういえばない。今までそれを当たり前のこととしていたが、改めて恵まれた環境にあるのだと知った。

 ただ逆に檀渓心理相談室の室内はおそらく他の相談室より断然「にぎやか」だと思う。物音がしたり話し声が聞こえるというのではない。いろいろなものがたくさんある、という意味でとてもにぎやかだ。箱庭やプレイセラピー用のおもちゃがたくさんある、ということもあるが、それだけではない。室内紹介檀渓心理相談室にあるいろんなものを見てもらえば分かるが、いろいろなものが置いてあり、絵や写真などもあれこれと飾ってある。開業の心理相談室ではこういうのは珍しいだろう。

 一般的に相談室、カウンセリングルーム、と言われるところは、なるべく室内をシンプルにして、余計なものを置かないように、目に付かないようにと工夫されているところが多い。特に精神分析的なやり方を採っているところでは、特にその傾向が強くなる。あれこれ目に付いて気が散らないように、先入観を与えず、自由にその人らしい話ができるようにという考えがそこにある。

 私たちの相談室はそれとはまったく異なっている。それでいいと思っている。一般的な考えからは外れるのだろうが、この相談室のカラーが出ている。雰囲気が分かりやすい。この相談室にあるものは一つ一つが全て歴史を持っている。その一つ一つのものと同様に、私も他のスタッフも、いろいろな経緯を経てここに来て、ここでカウンセリングの仕事をしている。様々な人やものの動きがあって今の檀渓心理相談室がある。相談室にある一つ一つのものが、ここはこういうところだと示しているのではないかとも思う。

 この相談室で、今年も来られる方と話し合い、一緒に考え、新しい方向性を見出していけたらと思っている。

 

 

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