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新年の開き直り

長谷川泰子

 

 お正月休みはほとんどどこにも出かけず、家ですごした。いつも休みの前は、せっかくならといくつか読みたい本・読むべき本を頭の中でリストアップするのだが、すべて読めたためしがない。何をするわけでもなくだらだらと過ごして、後から自己嫌悪、ということも少なくない。

 時々河合隼雄先生のことを考える。個人的に関りがあったわけではないから、河合先生が普段どのような生活を送っていたかは知る由もないけれど、とにかくお忙しかったことだけは間違いないだろう。文化庁長官を務められていたときも、クライエントには会っておられたと聞いたことがある。きっと最後の最後まで本業の心理臨床の仕事は続けられていたはずだ。絵本作家で「100万回生きたねこ」の作者でもある佐野洋子さんがどこかのエッセイで河合先生のことを書いていた。正確な文章は覚えていないが、難しい本をいっぱい書き、講演もして、日本中を飛び回っていろんな人にも会い、時にはフルートも吹いて、その上クライエントにも会って面接の仕事も続けている、本当に河合先生は人間ですか、というような文章だった。前室長の西村先生には、河合先生はいつもていねいに面接の記録を書いていたと聞いたことがある。当然と言えば当然だが、臨床の仕事は決して手を抜かれたりしなかっただろう。

 私はそんなスーパーマンみたいなことはできないなぁ、と心底思う。臨床の仕事は手を抜きたくない・抜かないつもりだけど、河合先生のようにいろんなことをこなすのはとても無理だ。でも、それでもいいと強く思う。だいたい自分と河合先生を比べて、河合先生のようにやろうとすること自体が間違っている。自分の性格や性質が大きく変えられるわけでもないし、私には私の道があるのだ。可能性を広げるために新しいことにチャレンジすることは考えられるけれど、他人にはなれないしならない。自分にスーパーマンの生活を課せば、他人にも常人離れの過度な努力を求めるようになってしまうだろう。

情けないな、だらしないなと思うことも多いが、それもひっくるめて自分だ、と認めて開き直っていくところもあっていい。そういう自分でどこまで行けるかな、とも考える。

 

 

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