職業病

長谷川泰子

 

 NHK-FMで毎週土曜日の朝に放送している「世界の快適音楽セレクション」という番組を毎週欠かさず聴いている。仕事があるのでリアルタイムで直接聞くことはできないけれど、以前は録音で、今は聞き逃し配信を利用して聴いている。ギターデュオのゴンチチが司会を務める約2時間の番組で、もう20年以上続く老舗番組、私が聴くようになったのはおそらく10年ぐらい前からだと思う。

 毎週ひとつのテーマがあり、それに関連した音楽をゴンチチの2人と「選曲家」と呼ばれるもう1人、計3名が持ち寄って紹介する。例えば「石」がテーマだとしたら、曲名に石が入るもの、CDのジャケットに石が写っているもの、ミュージシャンの名前のどこかに“石”が入っているものなど、「石」に関連した音楽が流される、そういう番組だ。

 この番組の魅力は、他の番組ではなかなか聴けない、ありとあらゆる分野の音楽が聴けること。ロックもクラッシックもジャズも演歌も歌謡曲も民族音楽も何でもありで、ブラジルもインドネシアもエチオピアも、世界各国の音楽かかる。知っている曲がかかることもあるがそんなことはまれで、名前も聞いたことがないような人の曲も多い。ただ、聴いていていいなと思う音楽は結構あって、あとから調べて(番組のHPで曲目のリストが掲載されている)CDを買うこともしばしばある。先日はアゼルバイジャンの歌手とセルパンという楽器を演奏するフランス人ミュージシャンの音楽が紹介されたが、これがとても美しい曲で、すぐにCDを購入した。

 実はラジオを聴くのはあまり得意ではない。テレビもうるさく感じることが多くてほとんど見ないけれど、ラジオは映像がない分、尚更聞くことに集中しすぎて疲れてしまう。昔は車の中でラジオを流していても全く何も感じなかったのだが、次第に人の声に意識が向きすぎるようになり、適当に聞き流すことができなくなってしまった。自分でも気が付かないまま一生懸命に聞きすぎて、いらないことをあれこれ考えてしまう。話題をひねり出したり、盛り上げようと躍起になっていたり、無理してるなぁとかわざとらしいなぁとか、人工的な要素や表面的な流れが感じられたりすると、気持ちが落ち着かなくなってとても聴き続けることができない。話を聴く仕事で、だからこそ人の話に敏感に反応しすぎるのではないか、一種の職業病だと自分では思っているのだが、他の臨床心理士はどうなのだろう。一人ひとりに職業病だと思っていることは何かと聞いてみると面白いかもしれない。おそらく臨床心理士の職業病として単一のものがあるというのではなく、むしろ一人ひとりの性格や気質にそったなにかがそれぞれにあるような気もするが、周りの人に聞いてみたこともないので分からない。

 ちなみに「世界の快適音楽セレクション」は全く苦痛に感じない。好きな音楽の話を楽しんでしている感じが伝わってきて、こちらも変に力が入らず無理なく気楽に楽しむことができる。だからこそ、10年以上も聞き続けていられるのだろう。

 

 

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