思い出とともに生きる

長谷川泰子

 

 久々にXさんが檀渓心理相談室に来てくれました。Xさんは西村洲衞男先生に指導を受けて臨床心理士になった方で、檀渓に来たのは2019年12月、西村先生の誕生日のお祝いを檀渓でした時以来だそうです。愛知県内ではあるものの少し距離があるところにお住まいということもあり、これまではこちらに来るのも難しく、約2年ぶりの再会となりました。

 Xさんが今の面接室を見て「私はこっちにきたら(西村先生が不在を感じて)落ち込むのかと思っていたけど、そうじゃない、ちゃんとあるんですね」とホッとしたように言われ、それがとてもうれしかったです。約一年前に檀渓心理相談室を引き継ぎ、ホームページも新しくしましたが、相談室はなるべく前の雰囲気を保ち、残っていた書や絵(多くは西村先生の友人、Gerow Reeceさんによるもの)、写真(西村先生がアメリカ滞在中に撮られたものなど)は全て飾るようにしました。先日も檀渓のスタッフと、私たちの相談室は思い出によって成り立っていると話をしていたところです。

 西村先生がずっと昔に「あの世に持っていけるのは思い出だけだ」と話をしていたのを思い出します。西村先生がたくさんの思い出を持ってご自分の旅に出られたように、私たちも先生が残してくれた思い出とともに自分なりの一歩を踏み出し、生きていきます。先生の魂を感じながらこの相談室を続けていきたいと、Xさんにお会いして改めて考えました。

 

 

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