2017年2月に東海箱庭研究会で行われた講演の資料です。東海箱庭研究会様の許可をいただいて掲載します。
私の箱庭療法
西村洲衞男
1 東海箱庭療法研究会のこれまで
1973中京大学 三木アヤ 亀井敏彦 吉田耕治 弘中正美 森谷寛之 西村洲衛男
歴代世話人 亀井敏彦 弘中正美 西村良子 長坂正文
三木アヤ 『自己への道』 黎明書房 1977
森谷寛之 『コラージュ療法入門』 創元社 1993
弘中正美 『遊戯療法と子どもの心の世界』 金剛出版 2004
2 河合箱庭療法
M.ローエンフェルト 世界技法 1939
京都市カウンセリング・センター紀要第2号1966
河合隼雄 箱庭療法 1967 (箱庭の治癒力に任せる)
D.カルフ Sand Spiel 1971
3 私の箱庭療法
箱庭にはその人の問題が現れる
箱庭療法と並行して夢分析を行う
内的な問題は、そこに注意を集中して考え続けていると、次第に内的な変化が起こり、生活が外的にも開けてくる
内的プロセスに深くかかわり続けると出会いがよくなり、人生が拓ける
4 私の箱庭表現の理解
河合は箱庭表現の内容には極力解釈を加えなかった
カルフは一つ一つのアイテムについて象徴的な解釈を行い、マンダラを重視した
私は箱庭表現の内容について最もふさわしい物語を読み取るようにしている、そしてその物語の展開を考える。物語が合っているときには予期した展開が次に生じている。私の箱庭の解説が面白いというのは、その物語がクライアントの内的なプロセスに合っているからだと思われる。
5 対話的心理療法
私は心理療法においてできるだけ真実を明らかにするように対話を進めていく
真実を明らかにすると人は安心する 真実だけが安心をもたらす
カウンセラーが話を聞いて感じ取った真実を述べると、相手も真実を述べるようになる そこに真実の対話が生まれる
クライアントはカウンセラーと正面から向かい合い続けるので、カウンセラーとの同一化が起こり、カウンセラーの性格を取り入れながら成長する。
共感と受容ではなく、カウンセラーとの同一化である⇒カウンセラーの社会性
6 真実とは何か
最も確かな真実は過去に経験したことと今経験しつつあることである
真実とは事実(fact)である
事実の背後、あるいはその中に真実があると考えるのは妄想である ex. 不潔恐怖の人が外出しただけで外の何かに触れ汚れたと感じ、家に帰ってから全て着替えたり、風呂に入ったりするのは穢れを妄想するからである。それと同じように人は事実の中に真実があると考える
事実に基づいた真実に向き合うと人は安心する
7 フロイト以前の心の癒やし
神話が生きていた時代、人は夢を信じていた
夢判断によって政治が行われ、占いによって明日のことや未来のことを判断していた
未来への不安を夢によって鎮めていた 初瀬信仰 医神アスクレピウス信仰(エピダウロス)
般若心経 度一切苦厄 能除一切苦 真実不虚
法華経 従地湧出品 仏の教えを説く人は大地の下の虚空から湧き出てくる 苦しんだ人が人の苦しみを救う
理趣経(マンダラを説明した経典) 人間の全ての欲望を肯定し、欲がこの世を整えると考えた 性欲、肉体の受容を認めた仏教 空海が持ち帰ったもの
お百度参り
8 フロイト以後
フロイト 心の世界を意識と無意識に分け、意識に主体性を設け、無意識を意識の主体性を犯すものと考えた 夢に現れる内容の断片から連想を取り、過去の事実を明らかにしようとした リビドー 性的エネルギー 生物学的な見方
ユング フロイトの無意識を個人的な無意識と考え、個人を越えた集団や人類の無意識を考えた 夢の意味するものを明らかにしようとした 夢はたましいのメッセージであるとして夢の中に真の意味があると考えた 心的エネルギー 神に等しい自己という統合的中心を仮定し、宗教的見方となった
ホーナイ 自己実現の衝動
アドラー フロイトの愛の衝動に対して競争・攻撃の衝動を考えた
吉本尹信 人の恩を重視した 犯罪者の更生に効果的である
ミルトン・エリクソン ブリーフ・セラピー アメリカの健康保険が短期間であることから生まれた問題解決法
大住誠 瞑想箱庭療法(『新瞑想箱庭療法』誠信書房2016) 基本的には森田療法である
9 動物学的心理学
人は動物である 赤肉団上有一無衣真人(臨済録) 禅では肉体ことを糞袋いうが、肉体は動物的人間である 動物学的な知見をベースにする 現代はコンピューターモデルで考えている
人は群れで生きる動物であると同時に個別の、家族単位の生活をベースとする
文化とは人間の行動パターンの束である 文化を変えることは大変むつかしい
人に可愛がられた犬や猫はいじめられない いじめの防止は愛し可愛がることが大切だ