ひと仕事終わった後のうつ状態

昨年11月横浜の学会で東洋英和女学院大学の篠原道夫先生にお世話になり自主シンポジュウムで自分の考えを発表し、岸良範先生、金城孝次先生、弘中正美先生コメントを頂いた。テーマは面接構造の再検討ということであったが、面接の内的構造を話しているうちに結論として、対話的心理療法について述べた。それは自分が長年かかって到達した私の独自の心理療法の方法であった。それはフロイトともユングともロジャーズとも違う私の独自のものである。このやり方はユニークなものであると思っている。

対話的心理療法というのは心の奥深くの真実のところで対話するもので、これは訓練無しではやってはいけないものではないかと思っている。
日常生活では常識が大事である。師匠の河合隼雄先生は「嘘は常備薬、真実は劇薬」と言った。相手の話を「そうね、そうね」と相手に合わせて聴いてあげる、それが共感と受容である。これは時として嘘の対話である。「だけど、本当はこうじゃないの」と本当のことをいうとぎくりとなってしまう。まさに嘘は常備薬、真実は劇薬」だ。

「あなたはお母さんのことは乗り越えたと言うけれど、あなたのお母さんのおかしさについての説明が聴いている私にはしっくりきません、もっとわかるように説明してください」というと途端に彼女は困ってしまった。彼女が乗り越えたとしていたのは、考えないようにしていたに過ぎないのだった。他人にもわかるようにしっかり説明して笑えるくらいに客観化してはじめて乗り越えたことになる。

こういう真実の対話をしていく心理療法のやり方に私は到達し、人生の一つの目標を達成したと思ったら私はうつになった。この後に自分が命がけで取り組むべき課題が無くなってしまった。目の前は空白となった。そしてうつになった。日頃の忙しさにかまけてうつは背後に潜んでいた。春の陽射しが感じられるようになって心にも春が来たように感じてこの文章を書いている。

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