風邪を引いた意味

 ここ2週間以上は風邪をひいてなかなか治らない。今度の風邪は久しぶりで、この前の日曜日久しぶりに一日寝込んで38度前後の熱の中で寝ていた。特に苦しんだ土曜日の夜と日曜日は東京で箱庭療法学会が開催されていた。いつもなら昔はこの学会に欠かさず出席していたのだが、昨年から出席していない。学会は若い人中心の学会になって年寄りはいなくても良くなったと思う。

 今年はいよいよこの学会にけじめをつけるときになったようで、一番ひどい土曜日の夜夢を見た。その夢は長い夢だったのだが最後のところだけ記憶に残った。

「大政奉還が行われた。将軍が“もう何もすることはない、・・・”と言った」

 将軍は河合隼雄先生なのか自分の中の将軍なのかわからない。私の中に将軍と称する奴が一人いるらしい。私にはこれまで見えなかったが他人には見えていたかもしれない。

 しっかりした文化をもった一時代は終わり、維新が行われ、それまでの将軍はもう何もすることは無い、かかわりのない存在になったのであると自覚させられた。

 しかし、次のことが夢の後思い浮かんだ。明治維新はいわば無血革命だった。箱庭療法学会の変化もそうである。多くの人は箱庭療法学会が変わったとは感じていないけれど、私個人にとっては大きな変化だった。常任理事や理事を辞めたのだから。河合隼雄先生の時代に活躍していた人は舞台から消え、若い人の時代になって、京都と東京の学会になってしまった感がある。ここにまた新しくユング学会ができるそうである。河合隼雄先生の時代は終わり新しい時代になったのである。私にとっては明治維新にも相当する出来事であったといえよう。

 維新の後、人々は新しい世界を見ようと咸臨丸に乗ってサンフランシスコに行き流行りはじめたアイスクリームを食べたということである。

 これからのいわゆるユング心理学に関心のある人は「日本ユング心理学会」という器でどんな心理学を学ぶのであろうか。

 最近の新しいユング心理学に私はほとんど関心がない。もうユングの本さえ読もうとしなくなった。ユング心理学を捨てたのではない。ユング心理学は私の心理学の基礎としてしっかり収まっている。河合心理学も私の血や肉なっている。それを踏まえて今自分の心理臨床を切り拓いているところである。

 今度の風邪は私に何もしないで寝ている時間を与え、新たにこれから生きる心構えを造るチャンスを与えたと言えよう。