臨床心理士という職人の仕事

 この頃毎日ダンケの相談室に行って仕事をするようになった。あまり旅行に行きたいとも思わない。毎日、カウンセリングにかかわる仕事をしていると心が落ち着く。私は勤勉になった。そうしているところに岩波の「図書」(2010 11)に小説家の片岡義男さんが、勤勉と職人とは同義であると書いているのを見つけた。

 私は今臨床心理士という職人をしているのだ。

 私の通勤の途中の赤池にケーキ屋さんがある。そこのご主人は毎日まいにちケーキを飽くことなく作っている。ときどき行くが、ケーキの種類と味はあまり変わっていない。いつも同じものでは飽きてくるが、いつもあったものが消えているとさみしい。いつものケーキとその味に慣れてくると、それを見るだけで安心する。そしてそこのおじさんのケーキを食べたことで満足する。行列ができるほどはやる店ではないけれど、結構愛されているのではなかろうか。おじさんは自分の生きがいとしてケーキを作って勤勉である。これからも毎日まいにちおじさんはケーキを作っていくに違いない。そして私も時々店を訪ねて行くだろう。

 このように勤勉な職人が働いている限り私の生活圏は安定している。ダンケの周りにはうどん屋さん、鳥屋さん、お好み焼き屋さん、洋食屋さんなどなどみんな勤勉に仕事をしている人たちがいる。みんな職人さんである。行列のできる店ではないが、心のこもったお店である。それが職人さんのお店である。私もそんな街の職人臨床心理士でありたいと思う。