プライドと攻撃性

 餌付けされたノラ猫二匹が我が家にやってきて9日たった。名前はまだない。猫たちは部屋の隅に引っ込んで中々出て来なかったが、秋生れの子猫は3日目には少し動き回るようになった。近づくとフーッと言い目をまん丸にして怒る。これはどうなるかと思っていると時が経つに連れて落ち着いてテーブルの下の座布団に陣取った。他の猫は敬遠して近づかない。今日は私がゆっくりと動くと傍を通り抜けるまでになってきた。大方は隠れているが、目が合うと目をつぶるようになった。

 お兄さん猫の方はまだまだ時間がかかるようだ。まだ昼間部屋の隅に身を寄せているのは変わりないけれども、今朝はイスの下にうずくまっていた。少し行動範囲が広がった。一昨日から目が合うと、目をまん丸にして威嚇的で、フーッと言い、近づくと前足でパンチを食らわせてくる。おびえた姿勢から明らかに怒りを示すようになった。この部屋に少し落ち着いて元気になったのであろう。攻撃的になってこのまま続いたらどうなるだろう、厄介だと思いると、これでやっと引越しうつ病から回復して少し元気になり、プライドを回復して自分を主張し始めたのだという感じがしてきた。そしてこのお兄さん猫の怒りは大変良いものに思えてきた。

 

 そう言えば、妹猫の方もフーッ、フーッと怒りを示しながら次第になれてきた。怒りを示しながら次第に仲良くなってくるこの過程がとても興味深い。怒りの背後に自分を失いたくないプライドあるのだろう。プライドは個性的な存在を保証するもので、それを守るものとして攻撃的な態度が必要なのであろう。猫でもプライドを持っているというか、ノラだからこそ一層しっかりしたプライドを持っていると言うべきか。プライドを持ち、脅威的な接近に対して怒りを示しながら関係を深めていくということで、これは私たち人間にも当てはまることだと思った。

<次へ                                   前へ>