野生の出会い

 明けましておめでとうございます

 本年もよろしくお願い致します

 

 年の暮れ27日に我が家にやってきた猫二匹ははじめ私の部屋に閉じ込められていた。そこは半ば物置のようになった部屋なので野良猫が隠れるのに丁度良い隙間がある。はじめはどこに行ったのかわからないので狭いところを覗いて見つけるという具合であった。

 夜中に猫たちは方々出口を捜し求めて本棚にも登ったので部屋の惨状にはびっくりした。二晩目はそれほどでもなかった。三日目は私たちが日中も居たので部屋の仕切りの戸を開けておいたら少しなれた秋生れのメス猫が早速出てきて、油断している隙にどこかに消えた。何処を探しても子猫がいないので、先輩猫たちのために開けておいた猫玄関から出て行ったのではないかと心配して春生れで子猫の母親役をしているオス猫を籠に入れて外に出して見たが一向に子猫の気配が無い。諦め胸塞いでいると子猫が台所の隅にいた。苦しい諦めは強い喜びに変わった。子猫は狭い隙間を通って鍋などを置いているところにもぐりこんでいたのだった。

 この騒ぎで、子猫がとてもかわいい感じがしてきたし、母親役のお兄さん猫の落ち着きも信頼できそうで、関係が深まった感じがした。

 しかし、箱のなかにじっとしているオス猫は問題をまったく起こさないから交流が少ない。撫ぜてもじっとして身を硬くしている。半年年長だから問題を起こさない代わりに私たちとの関係ももう一つ深まらない。関係を深めるには問題を起こすことが如何に大切かがわかる。

 やんちゃな子猫は撫ぜようと手を伸ばすとフーッと怒る。憎らしいが、関心を向けないでいると私たちの傍にあるクッションの上に居る。そこは強い猫の座だったところで、そこに陣取っている。

 

 前から居る猫たちは子猫を見ると何故か恐れをなして近づかない。餌も食べないで出て行く。暖かい居間をさけて他の部屋に、あるいは寒い玄関にじっとして退避している。子猫の存在が大人猫たちによってとても尊重されている感じがしている。子猫なのに大きな存在に感じられ、恐れられ、敬遠され、存在を尊重されているところが人間と違うところである。子猫のプライドかきちんと保障されているところがすごい。野生の出会いは先ず距離を保つことから始まるのだ。これからどのように関係が展開するか興味深い。

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