カウンセリングとスーパービジョンについて

 カウンセリングの事例研究会をやっていると事例の発表者を決めるのに苦労する。これはどこの研究会もそうではなかろうか。ある学会のワークショップで事例発表の依頼が意外なところから来たとか、遊戯療法学会で事例発表の依頼があったとか聞いている。私の研究会でも事例の発表者が少ない。研究会で自発的な発表者を待っていてもほとんど無いのが実情である。そこで誰かに依頼することになる。依頼先は大学院関係でスーパービジョンを受けながらカウンセリングを勧めている大学院生やそこの修了生で事例担当を続けている人、あるいは私の関係でスーパービジョンを受けている人ということになる。スーパービジョンを受けていないと、誰がどこで何をやっているのか見終えてこないというのがこの業界の私からないところである。

 見方を変えると、スーパービジョンを受けている人だけが、研究会で発表できるような事例をもっているということになる。他の人はあまり記録も書いていないのかもしれないし、あるいは、記録もメモ程度に書きっぱなしであまり整理されていないのかもしれない。

 カウンセリングはある程度面接が続いて行き、それで面接がうまく行っていればよいのであろうか。

 もしかすると、そのように流されているカウンセリングは普通の友達の相談とあまり変わりがないのかもしれない。

カウンセリングが他の人びとの人生相談と違うところは、クライエントのこころをもっと客観的に見て、分析し、かかわりを強めていくところにある。

 カウンセリング面接で観察し、記録した話の内容をスーパーバイザーの下で検討しかかわっていくときにクライエントの確かな心の変化が起こるのではなかろうか。

 振り返ってみると、個人分析やスーパービジョンを受けているときに、ビッグケースが出てきている。スーパービジョンを受けている人が研究会で発表できる。

 印象的な事例発表としては、若い初心者の発表事例が興味深い。学会の印象的な事例の多くはそうである。初心者の誠実さとこれから臨床心理士になろうという意気込みが事例を成功させているのではなかろうか。

 

 そこから考えると、初心者の成功は別として、スーパーバイザーとカウンセラーとクライエントのセットができたときに始めて専門的なカウンセリングということができるのではないだろうか。それ以外は大方普通の友達の相談を変わりがないのではないだろうか。