仕切るとまとめる その2

 ある男性は自分を好きだといってくれる人が現れたので、喜んで向かえ入れ、結婚生活を送った。ところが子どもたちが成長するにつれて、夫婦関係は難しくなり、かつて、積極的に自ら好きだと言った女性の態度が変わり、夫を嫌うようになった。果ては、一切関係を絶って、夫と絶交状態になった。一方、かつて自分を好きだと言ってくれた妻以外に相手が見つけられない彼は必死に家族をまとめたいと願った。家族を仕切る妻とまとめようとする夫の関係は子どもたちが妻についてしまうと、夫は切り離されてしまう。

 妻の父性原理のアニムスの仕切りと、夫の母性原理のアニマのまとめでは夫によほどの度量がないと勝ち目はない。女性の仕切りは論理的に行われ、ここでは他の理屈は大抵切り捨てられてしまうから男性の勝ち目はない。すごすごと引き下がるほかない。

 仕切る妻は夫に向けた心の窓を仕切るためにシャットダウンすることができる。こころのシャットダウン、このシャットダウンに包むタイプの男性が大抵参ってしまう。これは男女の別れ話だけでなく、女性の仲良し関係の破綻、父性原理の入りやすい律儀な関係に生じやすい。仕切られた人はひどい孤独の中で過ごすことになる。大きなストレスを生む。しかし、仕切った方では、仕切りの論理で守られており、一見、平和そのものである。

 現代はすべてが合理的に処理されるので、論理的な説明がつくとこれで良しと済まされるが、実際は恨みが残ることがある。そこで昔は幽霊やお化け、怪物のたたりを考え、細心の注意を払って心の平衡を保とうとした。そのような心の揺れの様子は江戸や明治時代の怪談話に良く現れている。うまく仕切って別れても、そのひずみは何かを残していくのである。

 

 カウンセラーは心の平安を作る仕事をしている。私たちは人間関係のひずみの修正をしている。だから、人間関係のひずみの結果、その残されたものに対する配慮を私たちカウンセラーセラーは忘れてはならないと思う。そのバランスの回復が新しい心を開いていくのである。