女性の自立Ⅱ

 中学生2年の女の子が友達に裏切られた。学校に行きたくないとごねていた。その子が相談室に話に来て、いろいろ話を聞いているうちにやっと友達に裏切られて、何ともならない苦しい気持でいることがわかった。

 友人Aが友人Bにあの子とつき合うなと言ったことがわかったのだ。Aは強い子で、Bはそれに従わないといけない。今まで仲の良かったBもAとつき合う関係で、彼女と話してはまずいことになる。こういうことは男にはわからないが女の子には切実な問題である。

 強いAが、Bにあの子とつき合うなら話をしないと言われると、Bはどちらかを選択しなければならなくなる。困ったことだ。男では政治の世界や仕事の関係で起こることが友達関係のことで起こるのだから気持ちが一層悪いに違いない。

 私の近所には同じようなことをしている2つのグループがある。それらは、元は一つであった。それが二つに分裂した。なぜか私にはわからない。互いに反目するわけではなく、平和共存している。これは大人のつき合いである。大人の女性でも、何かの加減で反りが合わないと一緒にやって行けないのだ。だから別々のグループができるのだ。そして共存する。その間に喧嘩はない。そこで喧嘩が起こるとしたら、グループの中に喧嘩好きな人がいるに違いない。

 子ども時代から思春期の少し大人の関係への変化の過程で、仲良しの再編成が起こり、仲間はずれになる者が出てくる。それが裏切られたという体験につながる。裏切られたとき、次にうけいれてくれる適当なグループがないと、ハバにされたこは一人にならなければならない。それは女の子にとって死ぬほどつらいことらしい。

 そういう時男なら一人で生きる選択が簡単にできるが、女性は一人でいることも苦しい。このために悩みを親にも打ち明けず、悶々と心の中で苦しみ、不登校になる。可哀想だ。

 大学生にもなると、そんな一人の女性が少なくない。彼女たちは大抵教室の比較的前や横にひっそりと、そしてまじめに聴講している。数人のゼミになっても一言もしゃべらない。しゃべれないから、授業が終わってから研究室に質問に来る。そこで丁寧に指導してやる。彼女はそれで満足する。女子大では、一人になった女性もこうして生きていくことができる。なかなか友達はできないが、どこかで心を開いて、親友を作ってほしいと願う。

 中学でハバにされ、一人になった女の子も、大学生になったらキットしっかりと生きて行けると教えてやりたい。また、結婚して大人のつき合いになったら、もっと自由に気の合う者だけで楽しくやっていける機会があることを教えてやりたい。ハバにされたということは個性的な生き方が出てきて、他の子と反りが合わなくなったのだ、だから一人でいなくてはいけない。一人で生きる独立した人格になったのだと教えてやりたい。

 この時代を迎えるために、ハバにされて一人になったときそれに耐えて、いつかきっと見返してやるという意地を持ってほしいと思う。

 

 女性が自立する時代になって、金魚の糞のようにトイレに行くにも連なっていく女の子たちと、自分は自分でという生き方の女性が分かれてきたのではなかろうか。私は金魚の糞は苦手である。