カウンセリングの仕事をしていると、時にこちらもなんと言っていいのか分からないくらい大変な話を聞くことがある。聞いている方も打ちのめされそうになったり、無力感に襲われてしまいそうになったり、それぐらい大変な話だ。
私たちカウンセラーは普段からいろいろな研修を続けている。臨床心理士の資格は5年ごとに更新義務があり、その間に一定の研修を受けないと資格の更新はできない。しかしこの仕事を続けている多くの人は、義務ではなく必要を感じるからこそ研究会に出たり、スーパービジョンを受けたりしていると思う。ベテランと言われるぐらいの経験を積んだとしてもそれは変わらない。大変な話を腰を据えて聞くためにはそれなりの自主的・主体的なトレーニングが必要になる。
いつまでたっても触れることができないようなつらい出来事や苦しい体験があるのも事実だ。しかしやっかいな問題としか感じられなかったことや打ちのめされそうな思いを抱いたことでも、時が過ぎて状況が変わると、ちょっと違った思いで見ることができるようになることもある。後から振り返ると、あれがあったからこそ今がある、自分には必要な体験だった、必然の出来事だったと思えるようなこともある。
私たちカウンセラーは、打ちのめされそうな状況においても、そこにかすかな一筋の光を見出す力を身につける必要があるのではないか。
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