少し前に、東京の矯正協会で行われた箱庭の研修会でも強調したことだが、カウンセラーが箱庭に興味があり、相談に来た人にも箱庭をやってもらいたいと思うなら、まずはカウンセラーの方が自分で箱庭を作ってみることが大事だと考えている。自分で体験してみると、箱庭を作るおもしろさ、大変さも実感できる。それに面接室にある箱庭を自分でも使ってみることで、もう少しこういうアイテムがあるといいとか、砂の量がちょっと多くて作りにくいとか、棚が見にくい、などということも分かってくる。そうすると自然に面接室に来た人が自然に手を伸ばしたくなる箱庭環境が整えられていくことになる。
大学院に入って本格的に臨床心理学について学び始めた時に、夢分析に関心が高い先生に指導を受けた。その結果、私も自然とそういった方向に関心を持つことになったが、カウンセリングの中でこういう夢を見たと報告されることが多くなったのはつい最近、この相談室の室長を引き継いだ頃ぐらいからである。それまでも夢を聞くことはあったが、引継ぎの後から、報告してくれる人が急に増え、夢が話題になることが驚くほど増えた。こちらが夢について聞かなくても、こういう夢を見て、と話をする人も多くなった。相談室を引き継いだことで主体的な姿勢が強くなり、それがいろいろなところに変化を生じさせたのではないかと考えている。
もちろん、自分自身の立場の変化などについて、相談に来られる方に話をするわけではない。しかし、カウンセラー側の姿勢は言葉にならないところでなんとなく相手に伝わっていくものらしいと、この引継ぎの時の体験で強く実感した。
カウンセリングは話をするところ、対話をするところではあるが、言葉にならないところ、自分でも意識しないところでの関りも生じるものだ。だからこそカウンセラーもスーパービジョンや教育分析が必要になるし、それだけではなく、生きることを楽しんで、自分の人生を歩もうとする姿勢も重要になってくるのだと思う。
〈次へ 前へ〉