「カウンセリングに来るようになると出会いが良くなる」というのは、前室長の西村洲衞男先生がしばしば言っていたことだ。
もちろん、カウンセリングを続けていれば必ず絶対、というものではない。カウンセリングでいろいろなことを深く考えて、より自分自身に近づくことができるようになると、ということだろう。自分自身に忠実になり、自分らしさが出てくるようになると、行動の仕方、人との関わり方も変わってくる。そうすると今までの自分では行かなかったところに行くようになり、これまでには会わなかったような人に会うようになる。今までの自分ではたとえ会ったとしても関わらなかったような人と深く関わるようにもなる。自分に近づけば自然と自分に合った人と出会えるようになってくる、そういうことだろう。
自分自身に忠実になる、自分自身に近づく、というのは、自分を変えるということとは少し異なるかもしれない。強いところも弱いところも否定せず、それを全て自分のものとして受けとめるようなことであって、今までせき止められていたエネルギーの本来あるべき流れを見つけるような作業とも言える。もともとの自然な流れを考え、それを極力尊重する、という感じだろうか。
本来のあり方からそれほど大きく外れていなければ、そういった流れを見出し、それを取り戻すことにそれほど労力を必要としないかもしれない。しかし一度出来上がった川の流れを変えるためには相当な時間と労力を要する。本来の流れを邪魔する何かが大きく居座っているようなこともある。地盤が固くて動かしようがない場合もある。流れを変えるなんてそんな面倒で迷惑なことは嫌だと周りに拒否されるようなこともある。急には変えられない。むしろ急な変化は無理を強いるもので、危険をもたらす場合がある。それでもあきらめずに考えるのがカウンセリングという場だと思っている。
カウンセラーが相談に来られた方の出会いを用意することなんてもちろんできない。しかしここでの話し合いが人との良い出会いを生むものになるよう、考えることはできるのではないか。
〈次へ 前へ〉