大地に触れる

長谷川泰子

 

 先日の沖縄行きは昨年の熊本旅と同じメンバーだったこともあり、熊本を旅した時と同じやり方、共通メニューと個人メニューをミックスさせた気楽な旅だった。今回は初日の午後に現地集合してまずは皆で買い物、ホテルの部屋で勉強会をした後は沖縄料理の店で盛り上がり、そこで解散。飛行機もホテルもバラバラ、前後の行程は各自の自由。熊本旅の時も感じたが、やってみるとこれは本当に楽なグループ旅行でおすすめだ。

  2日目の朝にレンタカーを借りて那覇から南に向かった。せっかくの沖縄なのでぜひ海の近く、波の音が聞こえるぐらいのところで泊まりたいと思い,適当な宿を南部で見つけた。行ってみると海以外に何もなく、海辺でぼーっとしたり近くを散歩したりするぐらいしかやることはない。しかしそれで十分だ。今年は沖縄も例年より暖かい冬だったようで、海辺でも寒さは全く感じず快適に過ごした。

 沖縄行きのメンバーに2日目以降の予定を話したところ、「アーシング」というものがあると教えられた。最近は携帯電話などが発する電磁波の影響が大きくなっている、それを少しでも回避するために素足や素手で大地に触れる、それをアーシングと言うのだそうだ。洗濯機のアースと同じで、体にたまった電気なり電磁波なりを地中に逃がすようなイメージだろうか。せっかく海の近くに行くなら、ぜひやってみてくださいと勧められた。

 体に電気や電磁波がたまっていると言われても実感もない。アーシングの必要があるのかどうかもピンと来ないのだが、ただ、やはり青い海を見ながら砂浜を歩いていると、自然と裸足になって直接砂浜に触れてみたいという気持ちになってくる。浜辺に行ってすぐに靴を脱いでしまった。

  今の生活では素足で地面を歩くようなことはほぼ無い。もともとは田畑に囲まれたのんびりしたところで育ったこともあり、子どもの頃は裸足で泥んこ遊びもしょっちゅうだったのだが、今は自分の足で大地を踏む感触をすっかり忘れてしまっている。はじめは少しおそるおそる、何かを用心するように一歩一歩踏みしめる感じだったのだが、すぐにそれもなくなった。解放感もあり素足が砂に触れているというだけでリラックスする。裸足になるだけでこんなに気持ちがいいのなら普段の生活でもちょっとやってみたいと思ったぐらいだ。

 砂の感触というのは、少し不思議なところもある。人によって感じ方が異なるようだ。箱庭に使われている砂への触れ方を見ているとそれが分かる。同じ人でも、その時の状況によって砂の感触が違って感じられることもあるようだ。

 砂は箱庭の中でも重要なアイテムである。前室長の西村洲衞男先生は箱庭の砂にかなりこだわりがあり、箱庭に適した良い砂を求めてあちこち行っていた。日本海の方まで出かけたこともあると聞いた。手に入れた砂はていねいに洗い、天日に干して、きちんと手入れもされていた。それを今もこの相談室で使っている。たかが砂だが、この相談室にとっては大事な財産だ。

 

 

〈次へ  前へ〉