冬の木

長谷川泰子

 

 急に寒くなり冬らしくなってきた。私は季節の中では冬が一番好きなので、やっと、という思いが強い。

 冬が好きな理由はいろいろあるけれど、冬の木が好きということが大きい。すっかり葉が落ちて幹と枝だけになると、そこに木の本来のかたち、本当の美しさを見出すことができるように思う。冬の夕方、日が落ちかかって完全に夜になる一瞬前がベストで、オレンジ色の西の空を背景にして黒くはっきりと木のかたちが浮かび上がって見えると、いいなぁ、きれいだなぁと思う。

  いろんな木があるけれど、どのかたちもその木ならではの美しさがある。同じ木でも生えている場所によって、周囲の環境によってそれぞれかたちは異なるけれど、その場所に適応しながら、その木ならではの成長をしている。どの木にも生きる力を感じるし、生きるための努力と工夫を見ることかできる。

  自分が本来もっているかたちを受け入れること、認めること、知ることには大きな苦痛が伴うことがある。そのままのかたちを維持しながら生きることに苦労をすることもある。この相談室は、それぞれのもつ本来のかたちの美しさを認め、なるべくそれを損なわずに行きることを考え続ける場所でありたいと思っている。

 

 

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