いただいた手紙から

 西村先生の訃報を後から知った方から、時々メールやお手紙をいただきます。そんな中で、先日いただいたお手紙は西村先生の若かった頃の様子が良く分かり、ぜひ他の方にもお伝えしたいと思いました。手紙をお送りいただいた方の許可を得てこちらに掲載します。

 

 

 

 (前半略)

 私は西村先生のゼミでお世話になった者です。当時、西村先生はまだ30代で助教授でした。箱庭療法や遊戯療法、子どもの絵の分析や夢分析等について先生から授業を受け、興味深く楽しみに学びました。

 (中略)

 私が卒論のデータをまとめていたある時、統計処理のところで先生はご自分の指導の誤りに気づかれ(多分私の提示した資料にあり得ない数値があったのでしょう)、直されました。その時、いつになく厳しい表情で私に「あなたは言われたことを言われた通りにやっているだけで、そんな生き方ではこれから先困りますよ」というようなことを言われました。思いもよらない先生の言葉に、その時は「はい」と答えるのがやっとでした。真面目に取り組んでも、心ここにあらずだったのでしょうか。真面目だからこそ、先生に言われた通りにし間違いにも気づかなかったのでしょう。なんだか自分を見透かされたような恥ずかしさを感じました。今思えば、先生が真剣にそこまで考えてくださったこと、本当にありがたいことでした。

 (中略)

 先生は現実からかけ離れた神様のような存在に感じられたものです。そんな先生がゼミのコンパの時はいつもサントリー「リザーブ」を差し入れしてくださいました。当時の学生にはとても手が出ない贅沢品でしたから印象に残っています。コンパの時、先生はよくご自分のお子さんの話をされました。先生が保育園に迎えに行くと子どもさんがそれは嬉しそうにするとかで、「お父さんがお迎えに来ると、なんでそんなに喜ぶのですか」と保育士さんから聞かれたことがあったとか。私はそんな先生の話を聞くのが好きでした。

(中略)

 卒業してゼミの同窓会があり久しぶりにみんなが集まり、懐かしい顔が揃いました。先生とお会いしたのはそれが最後です。

 (中略)

 私には卒論を通してむ学んだこと、様々な出会いや経験がバックボーンとなっていて、基礎となる考え方はいつもぶれていなかったと思っています。

 西村先生との出会いは本当に貴重な宝物です。

 謹んで西村先生のご冥福をお祈り申し上げます。

 

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