夢分析と対話的心理療法

相談に来た人に私たちは夢を聞いて夢分析を行います。次回から夢を記憶して持ってきてくださいとお願いすると、夢は見ませんと多くの人が答えます。そう言う人に夢は現金だから必ず料金分だけの夢は出てきますと言って帰すと、必ず次回から夢を報告されます。ここにカウンセラーの夢を見させる力が働いているのです。

心理相談室に悩みを抱えてくる人は、意識の面から色々と考えています。かん考えに考えてどうにもならないから相談に来られるのです。そういう悩みがあるとき、その悩みについて夢は必ず何かを用意しているはずです。その夢が用意しているものを引き出すのがカウンセラーの役割です。

夢の人生は意識の知的な世界を超えています。夢の人生と意識の人生とどちらがホントと思いますか。夢の方が本当だという確信を教育分析で夢分析を深く経験した人は知っているはずです。

幸い私は、教育分析で普遍的なレベルまで夢を経験することが出来ました、分析を終わって15年ほど経って、ある時ラジオで指揮者の外山雄三氏と対談することがあった。氏は対談の最後に台本にない、印象的な夢は何ですかと問いかけた。それは教育分析の最後に見た夢を思い出させた。カラフルなきれいな同心円の模様の50センチくらいの筍の群落であった。その筍の群落は私が名古屋で出会った若い臨床心理士たちであった。夢は私の仕事での出会いを予見していた。しかも、その気づきを引き出したのは指揮者であった。指揮者はこういう人であると感心した一幕であった。

私の師匠河合隼雄先生はすでにすごく多忙な日々を送っておられるので、分析を受けるのを遠慮して夏休みにカリフォルニアのシュピーゲルマン先生のところに分析を受けに何年か通った。それはとても良い経験であった。河合先生とはディスカッションが出来なかったが、シュピーゲルマン先生とは下手な英語で話し合うことが出来て、有意義であった。その対話は、今、私の対話的心理療法に生きている。