私もおじいさんであるー学会発表で学んだこと

今年も心理臨床学会で事例を発表した。
 毎年事例を発表する人は私ぐらいだ。私は今80歳に近いが、精神年齢30歳くらいのつもりでいる変わり者で、狂の人であろう。狂の人はもの凄い孤独を覚悟しなければならない。だから、この発表に沢山の人が来て下さったので、狂人の私も少しは安心した。
 発表した事例は、人々の尊敬を集めたある業界のドンをおじいさんにもつ女性の夢と箱庭に見る結婚の内的な過程であった。指定討論をつとめてくださった山崖先生や司会の戸谷先生の適切なお言葉で私の発表も少しはまともなものになったと思う。質問も出てうれしかった。
 ある女性が、「クライエントのおじいさんのようなカウンセラー」という指摘があって、「霊柩車が通って行く」という最後の方の夢が私との関係も含んでいることがわかった。私は、彼女がたましいのレベルで尊敬していたおじいさんとの別れを考えていたのだが、霊柩車に乗っているのは私でもあったのではないかということだ。
 私はその頃故郷へ帰る夢を繰り返し見ていた。死に向かいつつある存在だった。それをクライアントのたましいは察知していたのかもしれない。
 それはまた彼女が私と別れる心の準備でもあったのだ。
 たましいの世界の交わり、そういうことを意識させられた学会だった。