うつ状態と自立

うつ状態になると何事も悲観的に考えるから、質の悪い病気と考えがちである。

私も先週末の学会発表が終わりホッとして軽いうつ状態になった。何かしなければならないと思うが行動が伴わない。少し遠くに買い物に行けば望みのものが手に入ると思いながら腰が上がらない。机の前に座って考えると良いのにできない。疲れて眠たいから横になっても眠れない。

こういう時抗うつ剤や睡眠導入剤を飲めば、元気も出てどこかへ行く気になるかもしれないし、マイスリーを飲んで横になれば眠れるだろう。精神科の医師はそれを勧めるだろう。

しかし、自分は心理屋だから眠れない中でこのうつ状態は何か意味があるのではないかと考えた。

今回の研究発表でわかったことのひとつは、クライアントが仕事上の行き詰まりで酷いうつ状態に陥った後、箱庭で「世界の中で自分ただ一人」という情況を表現し、そこから自分本来の動きが復活したことであった。それまで精神科の医師から見ると双極性Ⅱ型の気分障害であったが、箱庭で「自分はただ一人」という表現をした後はネガティブな感情も表現できるようになって、本来の自分つまり知的・理性的で、両親や家族や職場の人間関係を客観的に見ることができ、しかも活動的な性格を取り戻すことができた。人生の途中で仕事の行き詰まりをきっかけに起こったうつ状態による閉じこもりのような生活は入社以来良い社員を演じていたクライアントが本来の自分を取り戻すために生じたと見ることができる。

今回の学会発表によって私は世界に通用している学派の心理学にとらわれず、自由になって自分の心理学で生きはじめたということに気づいた。私はこの心理臨床の世界でただ一人である。もしかしたら誰一人私についてくる人はない。私は「こう考える」ということを発表しないと誰との関係もできない。それは孤独な存在である。「世界の中でたった一人」なのだ。周りに誰もいない。この孤独の中で自立的に生きて行かねばならないと決心した。

この文章を書いて4日経った。なかなか出す気にならなかったが、やっとブログに出さなければならなくなったように思う。私はうつからの回復をしなければならない。

 

ある読者の感想:最初の一文で「何事も悲観的に考える」と思われがちなうつ状態であるが、そうではなくて「世界の中でたったひとり」と認識しあたらしい自分を発見するためのうつ状態・閉じ籠もり状態があるということと私は理解しましたが、合ってますか?

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