会社で強い子供を育てるには

  厳しい社会を耐え抜いて生きていく社会性を育てるにはどうしたら良いか、そのことについて私の考えを述べておきます。

 自分の子どもは学校でほとんどものを言わず、覇気が無く、家でも何やらわからない絵を描いており、何をするにものろい、このままでは会社に入ってから厳しい人間関係の中では到底生きていけないと心配して子どもを厳しく叱りつけて育てていらっしゃる方があった。その方自身、厳しい上司や同僚に囲まれ思うように仕事ができないと悩んでおられ、初めそのことで相談があった。その方も会社の中で萎縮し、子どもさんは家でも学校でも萎縮していると私は考えた。親の方では職場は厳しいから、今のうちに厳しさに慣れておかなければ厳しく叱る。その結果ますます萎縮した性格になり、叱られやすくなる。損な性格になってしまう。ここには厳しさで人を萎縮させる躾けの連鎖がある。

 私はその方に子どもを決して叱らないで下さいと言い、子どもさんにプレイ・セラピーを受けてもらうことにした。プレイ・セラピーが進むにしたがって、少しずつ元気が出て来て子どもさんは甘えてわがままを言うようになった。幼児的になってわがままを言うことがその方から見るともっともいけないことと見えたようでまた厳しく叱ってしまい、その後カウンセラーに叱るなと言われたのに叱ってしまったとひどく罪悪感におそわれていらっしゃったようである。

 カウンセラーが叱らないでくださいと指導したことに対して、その通りにできなかったと罪悪感を抱くということ自体、上の人、上司や先生や親の言うことに従わねばならないといつも自分を卑下した萎縮した生き方であることを示している。こういう生き方をしていると、いつも自分は間違っていないか、やり方がまずいとみられるのではないかと思い、のびのびと生きることができない。多分この方自体叱られて育てられたに違いない。

 のびのびと生きるには、子どもの自発性を育て、自らやったことを尊重し相手をすることが大切である。プレイ・セラピーでは、プレイルームで子どもに自分の好きなようにさせる。好きなことをして相手をしてもらううちに自分は好きなことをしていいのだと思うようになる。そうすると子どもは幼児的になる。甘えてわがままを言うようになる。このわがままの発現が大切なのだ。甘えるわがままな態度が身に付き、それで自己主張をするようになると初めて強い社会性が育つのである。幼児性はのびのびとした人格の土台である。この土台がしっかりしていると社会に出て強くなる。

 可愛がられて育った人はたとえ失敗しても可愛がられる、叱られて育った人はどことなく自信が無く、うまくやってもほめられないことがある。人は可愛がられる雰囲気を持っていた方が得である。世の中にはわがままで人に迷惑ばかりかけている人があるけれど、そのような人は本当に自分のしたいことで愛されていないからギャンブルや怠けという逃げ道でわがままをしているのである。素直な赤ん坊のような自分を取り戻すことがプレイ・セラピーの目的です。

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