心理療法(心理面接)は効果がありますか

(表題には心理療法という言葉を使ったが、本文には心理面接を使う。心理療法は医師が行うものであるから、臨床心理士である私は心理面接を用いることにする)

 

 ずっと昔、ある大学の研究生をしながら心理面接をどこかでしておられた方があった。その方の事例は数年続いていたが面接内容に全く変化が無いので不思議に思っていた。また、その研究生の方は裕福な方で経済的には全く心配のない方であった。私はその方の社会的地位も経済的な面も全く心配ないことと、心理面接にまったく変化が見えないことに何か関係があるのではないかと思い出したからである。

 それはユングの本を読んでからである。ユングは恋人の経済的な援助で分析を受けるという青年を申し出を断った事例を書いている。恋人に分析料を払ってもらってはあなたのノイローゼは治らないという理由からである。

 私は長くうつ状態に苦しむ男性の心理面接についてコメントを求められたことがある。そのクライエントの男性の悩みは意欲が湧かず、中々仕事に就くことができないということであった。彼には親ゆずりの財産のアパートがあって、その収入で生活が成り立っていた。それで有料の心理面接も続けることができた。数年に亘って心理面接は続いてあまり変化が見られない。クライエントの抑圧された怒り、カウンセラーの気持ちをどうしたらよいかという問題があった。

 私はこのように生活の経済的問題がない場合は心理面接に通うことで働かなくて良いという免罪符ができているので、この場合は治るのは難しいとコメントした。担当のカウンセラーはそのようなコメントをもっと早く聞かねばならなかった。

 その会場で興味を引いたのは、私のコメントにうなずく人がかなりあったことである。その方たちはどうやら同じようなクライエントを抱えて困っているのであろう。長く面接に通うクライエントの中に、うつ状態に入ってこうして社会的な適応を回避している人があることを考えなければならない。

 このような人は道徳的な面からは責められるかもしれないが、やむを得ずそういう状況に陥っているのであるから、抜け出すまでじっと我慢するのもカウンセラーの役割かもしれない。少なくとも相談室の経営には役に立つのである。

 最近、長く心理面接を受けて失敗だったという気持ちを抱いている人があることがわかった。心理面接をおこなう人は高度な資格を持っているし、料金も高いし、医師や臨床心理士などがやっているので、効果があるはずだと考えて数年に亘って心理面接を続けるのだが一向に効果が上がらないというわけである。

 心理面接を受けたからといって必ずしも効果が上がるわけではない。むしろ、状態が悪化し、投薬を余儀なくされた人もある。あるいは心理面接で刺激を受け、活動的になりすぎて、却って人間関係を壊してしまった人もある。

 これから心理面接を受ける方は、カウンセラーの性格や人柄を良く見極めて受けてほしいと思う。そして、心理面接が自分に良いかどうかを判断しながら、カウンセラーを話し合って進めていかれると良いと思う。

 ドクターショッピングはあまりよくないが、カウンセラーショッピングは大切ですといったら、ある人は心をお金で買うようではないですか。そんな心のショッピングはできません。そんな考え方の人にはあいませんと断られた。

 

 私は心がお金で買えると思っている。それには自分に向き合うというとても辛い仕事が伴う。その辛さお金で何とかならないかというのが楽に治りたい人の本音であろう。でも自分に向き合う辛い仕事は手助けできるだけで、代わりにやってあげるわけにはいかない。現実は厳しい。でも、この辛い仕事を何とかやっていこうとする人のためにこの相談室はあると考えている。