一体感がほしい

 (この一文は昨年8月初め書いたものである。河合隼雄先生のご逝去に際し、先生の思い出にHPに掲載することにした)

 現在、彼と彼女の関係にありながら、中々結婚に踏み切れないカップルが少なくない。彼と彼女の関係になったけれども、もう一つ結婚に踏み切る決心がつかないというのである。そんな中に、関係は持っているのだけれど一体感がないから心配だという人があった。

 一体感の欠如、それは現代日本人の心の中に深く確実に侵攻している問題ではないかと思った。

 去る、7月17日海の日に愛知県芸術文化センターのコンサートホールで、『河合隼雄・工藤直子。リコーダーアンサンブル』という会を催した。そこでは第3部で参加者が持参したリコーダーを吹いて河合先生らと合奏した。1千人の人がぶっつけ本番で「ふるさと」を合奏した。それがリコーダー教育研究会の方の指揮でいきなりハーモニーしたのである。

 「ふるさと」という情感あふれる思い出の曲でハーモニーしたので参加者全員が感動に包まれた。お蔭で沢山の方にうれしい感想をいただいて来年もやろうという気になった。

 このリコーダーの合奏で体験した一体感はこのときこの場の1回限りの体験ではなく、今まで深く何となく感じていた生活の中の深い孤独感、個性の尊重と能力重視の競争原理の中でばらばらになってしまった人間関係の寂しさを埋めるものになったのではないかと思う。

 

 私のクライエントの個人的な問題というよりも現代日本人のほとんどが感じている問題ではないかと思った。