対人恐怖の人へ

 めずらしい事例は重なると言います。ユングがまだ学生だったときでしょうか、めすらしい疾患の人が受診してきたのを見て、教授がめずらしい事例は重なるので注意していなさいと言ったので、注意していたらやはり同じような患者さんがやってきたそうです。私たちの相談室でもそのようなことが起こります。偶然のことですが不思議な現象です。つい先ごろも船の衝突事故が短い期間に続いて起こったことは皆さんも良くご存知のことです。

 最近経験したのは対人恐怖症の事例です。

 対人恐怖の事例は長年ほとんど経験していなかったのですが、昨年秋から今年にかけて続きました。一人の方が中断のような形で終わり、新しい方が肩代わりのようにお出でになりました。状態像は後の方がもっと悪いので難しいわけですが、悪い分こちらも一層が頑張らねばならないという気持ちになっています。

 続いて対人恐怖の方がお見えになったことは、今私に対人恐怖のコンステレーションが布置していることを示唆しています。私は対人恐怖のことを今しっかり考えることがよいと思います。河合隼雄先生が、自分は対人恐怖のところがあるとおっしゃったとある方が最近話されました。私も昔先生が人に会うことは苦手だと言われたことを思い出しました。先生は得意の冗談で対人緊張をやわらげておられたと思います。それは最後までずっと続いていたので、対人緊張はずっと続いていたのではないでしょうか。

 神経症的な症状はなかなかな消えることはありません。われわれに出来ることは、対人恐怖の悩みに煩わされて自分のまともな生活ができなくなっているところに、心の自由な領域を少し広げることではないでしょうか。多くの人が実際は対人恐怖的で、人の目を気にしながらも自分の生活を守っているので生きていられるのだと思います。

 

 ですから、私たちカウンセラーの仕事は対人恐怖の悩みに占領されている心に何とか自分の自由な心の領域を広げることではないかと思って今努力しています。それには箱庭療法はかなり効果があるように思います。箱庭療法と夢分析の併用をお勧めします。